
耳で観る展覧会へようこそ。《Infinity Mirrored Room》は、扉が閉じた瞬間に境界が消える部屋です。四方の鏡が光の点を幾何級数的に増殖させ、あなた自身の像も縦横に分裂・反復する。ひとつの点は直列となり、やがて面となって奥行きを無限化し、足音と呼吸は群像の“わずかなズレ”として空間に拍を与える。ここで見ているのはオブジェではなく、反射の法則と自己像のゆらぎという状態そのもの。限られた滞在時間=有限の枠の中で、無限の感覚が立ち上がるのです。最後は心に残った最も明るい一点を、そのまま内側に保持してみてください。
出典:草間彌生《Infinity Mirrored Room》シリーズ(1965–/インスタレーション:鏡・照明・構造体・一部水盤、サイズ可変)。各館所蔵・展示(例:The Broad「The Souls of Millions of Light Years Away」(2013)ほか)。