
耳で観る展覧会へようこそ。《The Weather Project》は、展示室を天候へと変える装置です。半円のディスクと天井の鏡が“太陽”を作り、低圧ナトリウム灯の単色光が色彩を奪ってオレンジ一色の世界を出現させる。霧は境界を持ち、粒で光を可視化。観客は歩き、寝転び、手を振る——そのふるまいが影と反射を増殖させ、作品の形を左右します。私たちはモノを見るのではなく、状態を体験する。ここでは、光の“量”と“色”が引きはがされ、知覚が環境に従属することが身体で分かるのです。ターナーの天候、モネの空気の系譜の先にある、21世紀の“天気の彫刻”。
出典:オラファー・エリアソン《The Weather Project》2003/インスタレーション(低圧ナトリウム灯・ミスト・鏡面天井・半円ディスク)/テート・モダン(ロンドン)タービン・ホール。