
耳で観る展覧会へようこそ。《The Ten Largest, No.7》は、楕円・渦・点・帯が拡大/反復/循環しながら“成長の拍”を刻む一枚です。マットに乾くテンペラの面は光を抑え、紫・橙・青・白の層が混ざらずに並ぶ時間を作る。下方の大きな楕円で呼吸を合わせ、帯の曲線に導かれて渦の中心へ、点の群れで密度が上がる——そんな視線の旅路のなかで、形は記号ではなく経験の抽象として手触りを持ちます。光源は描かれず、明度差と白線の縁が浅い浮きを与え、平面の上に“浅い空間”が立ち上がる。ここで私たちはモノを見るのではなく、大人になるというプロセスのリズムを体内で聴くのです。最後は10秒の無音で、あなたの呼吸が画面の渦を一回転させる時間を数えてください。
出典:ヒルマ・アフ・クリント《The Ten Largest, No.7(Adulthood)》1907/テンペラ・紙(カンヴァス貼り)/約328×240cm/モダーナ・ムゼット(ストックホルム)