
<プログラBLOG|2023年11月11日から>
テレビCMの「インプレッション取引」を考察する
現在のテレビCMは、番組平均視聴率をもとにした「GRP取引」が主流だが、米国では個別CM視聴数に基づく「インプレッション取引」へと移行しつつある。Nielsenの視聴率指標の廃止延期により、今後は複数の測定手法が並存する「多通貨時代」に突入し、日本でも視聴率に代わる「代替通貨」の導入が急務だと考えられている。
視聴率には「実数」がなく、セグメントやエリア間での合算・除外ができないという構造的な課題がある。これに対して、インプレッション取引では、表示回数(=実数)でターゲット別の広告効果を定量化できる。例えば、自動車広告のように特定の条件をすべて満たすターゲットはわずか約70万人しかおらず、視聴率で評価すると効率が正しく測れない。一方、インプレッション数であれば、セグメントごとの価値をCPM(広告表示1,000回あたりの単価)で定義し、総量評価が可能となる。
プログラマティカでは、ターゲットに応じた「仮説CPM」を設定し、メインターゲットと周辺ターゲットを含めた「トータルTCPM」で評価する方法を提案。F20+女性へのみ課金する試算では3割の収入増、MF1・MF2層に絞った場合でも4割増が期待される。こうした分析により、既存のGRPベースのCM取引に比べ、テレビCMの価値をより的確に可視化できるとする。
また、インプレッションを実数化することで、テレビとストリーミングを統合した「GRPs(s付き)」という新たな指標による横断的な評価も可能に。これにより、テレビCMの持つ大量リーチという強みを生かしつつ、デジタル広告との一貫した効果測定が実現できる。
一方で、インプレッション取引には課題もある。最大の懸念は、CMの視聴数が膨大になりすぎ、GRPと比べて直感的な理解が難しいこと。さらに、放送エリアが県単位で分断されている日本では、CPMや%コストに大きな地域差があり、統一的な取引指標としては扱いづらい。このような課題にも対応できる柔軟な仕組みとして、GRPを実数ベースに再定義し、よりマーケティングに即した通貨への転換が求められている。
結論として、テレビCMの「インプレッション取引」は、単なる視聴率換算ではなく、ターゲット単位での正確な評価と購入が可能となる、新たな時代の広告取引モデルであり、今こそその導入を本格的に検討すべき段階にある。