
今回は、カフカの選書。
2015年に初版が刊行された『物欲なき世界』を取り上げます。 かつての日本では、良い家、良い車、ブランド品といった「物」を持つことが豊かさの象徴でした。
しかし本書は、物を持つことが幸せの条件ではない社会の構造を描き出し、若者を中心にもはや物を所有することが幸せの条件ではない社会が到来しつつあることを予言しています。
社会構造の変化の背景として、著者の菅付さんは主に3つの理由を挙げています。
第一に、情報が多すぎることによりブランド品のような分かりやすいステータスの価値が相対的に下がったこと。第二に、SNSやゲームなど、お金をほとんど使わずに満足できる別の快楽が増えたこと。そして第三に、物よりも物語、体験、関係性(例:推し活やオンラインコミュニティ)といった、別のものに人々が価値を見い出すようになったこと。
これは、現代社会が「定常型社会」(脱成長に近い)にあり、成長に代わる価値や目的を見つける必要性を示唆しています。
この回では、資本主義の中で働きながらも「それでいいのか」という問いを持つカフカの個人的な葛藤と、脱資本主義の理想像として描かれたポートランドが現実には困難な状況にあるという考察を対比させながら、「物欲なき世界」の実現が資本主義との共存という点でいかに難しいかという問題を深く議論します。
最終的に、私たちは「時間とお金とリソースを何に投資すれば幸せになれるのか」という、極めて抽象的で普遍的な問いに立ち返ります。