
みなさん、「フィラー」って言葉を知っていますか。「あのー」とか、「えー」とか、「なんか」ですよね。今回はそのフィラーについての話です。[倉川ジョン]
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みなさん、フィラーって言葉、知ってますか?英語だと、likeとか、you know? I mean。韓国語だったら、クーとか、クゲー。中国語だったら、那個とか、よく使いますよね。日本語だと、みんながよく使うフィラーは、やっぱり「あのー」とか「えーと」とか、「えー」もあるし、「そうですね」も時々フィラーですね。
それから「何ですか」とか「なんか」も、よく使う人がいますね。話を考えるとき、質問の答えを考えるときに、すぐに答えられないな、ちょっと考えたいなと思ったときに出てくる言葉が、フィラーですよね。
皆さんは、どんなフィラーを使っていますか?
やっぱりフィラーを上手に使える人は、「この人は日本語が上手だな」って思われますよね。だからフィラーを上手に使えることは、上手な外国語を話すために、もちろん必要なことなんですけど、多すぎてもやっぱり良くないし、同じ種類のフィラーばかり使っても、やっぱり良くないですよね。それに、ちょっと良くないフィラーもあるよ、というのが今日の話です。
私は日本語の先生ですが、最近、私の学生、私のクラスの学生が、「なんか」をたくさん使うようになったんですよね。私はJLPTのN1からN5まで、全部の自分のグループクラスがあるんですけど、その全部のクラスで学生さんが、最近「なんか」を使うことが多くなってきたんですよね。
例えば学生さんが、
「先生、私、最近高級料理を食べました。」
「どうして高級料理を食べたの?」って聞いたら、
学生さんが、「なんか、主人の友達が先週誕生日で…」とか話すんですよね。
違うクラスで私が、
「それ、新しいメガネですか?」って学生さんに聞いたら、
学生さんが、「そうなんです。なんか最近ちょっと目が悪くなって…」とか。
みんな「なんか」をよく使うようになってきたんですね。
私は日本語の先生、正しい日本語を教える先生ですから、ちょっと気になりますね。
というのも、「なんか」というフィラーは、あまり公式(こうしき)の場で使えるフィラーではないんですね。公式の場というのは、会社とか、面接とか、スピーチとかですね。
この「なんか」というフィラーは、ちょっと子供っぽい、子供が使うようなフィラーなんです。
だから「なんか」をたくさん使うと、話している相手の日本人に、
「あれ、この人ちょっと子供っぽいな」と、
誤解(ごかい)される可能性があると、私は思うんです。
だから、その「なんか」というフィラーを聞くたびに、私は、
「このフィラー、みんなどこで聞いて学んだのかな?アニメかな?」って最初は思ったんですけど、
でも実はアニメとかドラマ、映画とかって、ほとんどフィラーを使わないですよね。なぜなら、アニメ・ドラマ・映画は、全部セリフが決まっているじゃないですか。単語を自分で考えて、文を自分で作らなくていいから、フィラーを使う場面は少ないんじゃないかなと思ったんです。
じゃあアニメじゃないよな。
多分、日本人の友達かな。それとも、最近流行り(はやり)の日本人のユーチューバーの誰かかな。
いやいや、でも、「なんか」を使わないでほしいな、変えてほしいなって思ってたんですね。
日本語の先生としては、やっぱり「なんか」じゃなくて、「あの」を使ってほしいんですよね。「あの」というフィラーは、会社で使ってもいいし、スピーチで使っても変じゃないですね。
私はやっぱり皆さんに、いい日本語を話せるようになってほしいですから、気になっていることですね、最近。
それで、私が、このポッドキャストなんですけど、このポッドキャストを始めて、だいたい1ヶ月ぐらいですね。9月の30日ぐらいに始めて、今日10月の31日ですから、だいたい1ヶ月になりました。
人生で初めて、なんか自分が話したことを自分で編集(へんしゅう)しているんですね。
編集というのは、聞きやすくするためにカットすることですよね。もし誰も喋らない時間があったら、その時間はいらないですから、全部カットします、全部切ります。
それからフィラーをカットしますね。
「あのー」とか「えー」とか「なんか」とか、全部カットするんですけど、
このポッドキャストを始めてわかったんです。
私だ。私のせいだ。
生まれて初めて、自分が長く話しているのを自分でもう一度聞いて、学生たちが「なんか」をたくさん使う原因が分かりました。
私が「なんか」を使いすぎているんですね。
私はよく「なんか」というフィラーを使っているんです。1回数えてみたら、30分で20回ぐらい言ってるんです。もうすごいですね。話を始めるとき、ちょっと考えたいとき、私は全部「なんか、そうですね」、
「なんか~」って、全部「なんか」って言ってるんですね。びっくりしました。
自分で聞いてみないと、本当にわからないことってあるんですね。30何年生きてるけど、びっくりです。
人生、本当に新しいことを始めると、勉強すること、学びがたくさんありますよね。
いや~、本当にやってみないと、全然わからないなって思いますね。
人生はずっと勉強です。
勉強といえば、中学校の頃ですね。私の英語の先生が男の先生だったんですけど、あまり面白い先生じゃなかった。ちょっとクラスも面白くないし、それに、その先生がめちゃくちゃ「えー」を使う先生だったんですね。
「えー、この問題は、えー、昨日見た、えー、宿題の160ページの、えー…」みたいな感じですね。
本当に「えー」をよく使う先生で、他のクラスメイトもその先生を真似してね、その先生の話し方を真似するときに、ずっと「えー」を入れるような、「えー」をよく使う、「えー」というフィラーをよく使う先生だったんですけど、
ある日、ちょっとそのクラスもあまり面白くないし、
「この先生は1時間に何回『えー』って言うのかな」と思って、
数えてみたことがあるんですね。
良くない学生ですね。こういう中学生いますけど、良くないですよね。
でも数えてから本当に面白くなくて、100回ぐらい「えー」っていうのを数えてから、もうバカバカしくなってやめてしまいました。集中力がない中学生でしたね。
で、私は自分が子供の時から、そんなに他人のフィラーが気になるのに、大人になった今、自分のフィラーは録音しないとわからないというのは、ちょっと面白いなと思いましたね。不思議です。
それでこの回は#11かな。#11なんですけど、前回の#9、#10、名言クイズの時ですね。名言クイズの時には、
「よし、もう『なんか』というフィラーを使うのはやめよう。絶対使わないように気をつけよう」
と思って話していたんですね。
サナポン先生と名言クイズが終わった時も、
「よし、今日は『なんか』を使わなかった。
いやー良かった、頑張った頑張った」
って思って、自分が録音したのを聞いてみたら、
「なんか私は…」
って言ってるんですね。
全然使ってるんですね。
いやー本当に難しいですよね。
習慣ですから、突然習慣を変えるのはやっぱり難しいですよね。私は
「そんな簡単なこと、すぐできるよ。そしてできているよ」
って自分では思っていたんですけど、できていなかった。だから今回、この#11では、1回も「なんか」をフィラーとして使わないようにしていますね。
すごーく今、気をつけて話しています。
えっ、
「先生は今日何回もフィラーとして『なんか』を使っていますよ。」
ですって?
では、ここで問題です。
私はこの15分で、何回フィラーとして「なんか」を言ったでしょうか?
この#11を聞いて、
「この先生、もう『なんか』を使わないようにしようとか言ってるのに、たくさん使ってるじゃん」
と思った人、残念でした。
それはね、この問題を作るために、わざと言ったんですよ。
だからそれは「誤解/五回」ですよ。なーんてね。
倉川でした。
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