
1.論文のタイトルCardiovascular effects of lactate in healthy adults
2.CitationCritical Care (2025) 29:30
論文内容の要約
本研究は、健康な成人男性8名を対象に、0.5モルの乳酸ナトリウム(LAC)輸液が心血管系に及ぼす影響とそのメカニズムを、ナトリウム濃度を合わせた高張食塩水(SAL)と比較したランダム化対照クロスオーバー試験です。被験者は4時間にわたって各溶液の静脈内投与を受け、心エコー検査および血液検査によって血行動態の変化が評価されました。
研究の結果、LACの輸液はSALと比較して、心拍出量を1.0 L/min増加させることが確認されました。この増加は主に1回拍出量の有意な増加(11 mL)によるものであり、心拍数には有意な変化は認められませんでした。また、左室駆出率(LVEF)が5ポイント向上し、グローバル・ロンジチュード・ストレイン(GLS)も改善するなど、収縮性の指標において良好な結果が得られました。
血行動態のメカニズムに関する分析では、SAL群で前負荷指標の上昇が見られたのに対し、LAC群では前負荷が安定した状態を維持していました。一方で、LAC群では全身血管抵抗(SVR)や有効動脈エラストランス(Ea)といった後負荷指標が有意に低下しており、平均動脈圧を維持しながらも心臓への負担が軽減されていることが示されました。
結論として、健康な被験者において乳酸輸液は、前負荷を増大させることなく、収縮力の向上と後負荷の軽減を通じて心機能を直接的に強化することが示唆されました。この知見に基づき、乳酸輸液は単なる容量補充液としてだけでなく、特に心機能障害を持つ患者の蘇生において、血行動態を最適化する有益な選択肢となる可能性が示されています。