
1.論文のタイトルThe European guideline on management of major bleeding and coagulopathy following trauma: sixth edition
2.CitationCritical Care (2023) 27:80
論文内容の要約
重傷外傷に伴う大出血および外傷性凝固障害は、世界的に主要な死亡原因の一つであり、適切な診断と迅速な治療が不可欠です。本ガイドラインの第6版は、外傷患者の診断および初期治療フェーズにおける39の推奨事項を、時系列に沿って提示しています。
初期蘇生においては、負傷から止血介入までの時間を最小限に抑えることが推奨されます。適切な施設への直接搬送を行い、四肢の出血には局所圧迫や止血帯(ターニケット)を使用します。気道管理では、意識障害(GCS 8以下)や低酸素血症がある場合に遅滞なく気管挿管を行い、正常換気を維持します。
診断とモニタリングでは、ショック指数(SI)や脈圧(PP)を用いてショックの程度を評価します。出血源の特定には、全身の造影CT検査や、外傷フォーカス超音波検査(FAST)を含むポイント・オブ・ケア超音波(POCUS)を早期に実施します。また、ヘモグロビン(Hb)値、乳酸値、凝固能の継続的なモニタリングが必要です。
循環管理では、止血が完了するまでは「許容的低血圧」の概念に基づき、収縮期血圧80〜90mmHgを目標とする制限的な輸液戦略をとります。ただし、重症頭部外傷患者の場合は脳灌流を維持するため、より高い血圧目標を設定します。輸液には等張性電解質液を用い、膠質液の使用は制限します。
凝固管理の柱となるのは、受傷後3時間以内のトラネキサム酸投与です。初期の凝固蘇生では、フィブリノゲン製剤や新鮮凍結血漿(FFP)を用いた戦略がとられます。その後の治療は、粘弾性検査(VEM)や標準的な臨床検査値に基づく、個別の目標指向型戦略へ移行します。フィブリノゲン値が1.5g/L以下の場合の補充や、正常なカルシウム濃度の維持も重要です。
抗血栓薬を服用している患者への対応として、ビタミンK拮抗薬にはプロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)とビタミンK、第Xa因子阻害薬にはアンデキサネット アルファ(利用可能な場合)やPCC、ダビガトランにはイダルシズマブによる迅速な中和が推奨されています。
また、出血制御後の早期からの機械的・薬物的な血栓予防の開始や、地域レベルでのガイドラインの実装、および治療の質を評価するための安全管理システムの構築が、患者の生存率向上に寄与すると結論づけられています。