
1.論文のタイトルA Critical Issue in the Management of Adult Patients Presenting to the Emergency Department With Acute Carbon Monoxide Poisoning
2.CitationAnn Emerg Med. 2025; 85: e45–e59
論文内容の要約
米国救急医学会(ACEP)による、救急外来を受診した急性一酸化炭素(CO)中毒の成人患者に対する臨床方針の報告です。本資料は、高気圧酸素(HBO2)療法が常圧酸素(NBO)療法と比較して、長期的な神経認知機能のアウトカム(遅発性神経学的後遺症:DNS)を改善するかどうかという点について、2017年の指針以降の最新の文献を網羅的に調査し、エビデンスに基づいた推奨を提示しています。
一酸化炭素はヘモグロビンと強力に結合して組織の低酸素状態を引き起こすほか、遊離基の生成や脂質過酸化といった細胞レベルでの炎症・免疫損傷を誘発します。これにより、初期曝露から2日から40日後に、記憶障害、集中力の欠如、精神症状などの神経学的後遺症が現れることがあります。
研究チームは、以前の指針で検討された5つのランダム化比較試験に加え、新たに発表された大規模なレトロスペクティブ研究およびメタ解析を分析しました。日本のデータベースを用いた研究では、HBO2療法を受けた群において、退院時の精神状態や日常生活動作(ADL)の改善がわずかに認められました。一方で、複数のメタ解析の結果は一貫しておらず、死亡率や全般的な神経学的予後における明確な優位性は証明されていません。
結論として、強い科学的確実性を示すレベルAおよびBの推奨を策定するには至りませんでした。レベルC(専門家の合意または限定的な証拠に基づく推奨)として、症状のあるCO中毒患者のうち、症状の重症度や治療施設までの距離、移動時間を考慮した上で、特定の患者においてHBO2療法の恩恵を受けられる可能性があるとしています。特に記憶障害のリスク低減において、HBO2が寄与する可能性が示唆されています。今後は、治療開始までの時間や投与プロトコルを標準化したさらなる研究が求められています。