
1.論文のタイトル:Fat embolism syndrome after trauma: What you need to know2.Citation:J Trauma Acute Care Surg. 2024;97: 505–513.
論文内容の要約
概要と定義脂肪塞栓症候群(FES)は、主に長管骨の骨折や整形外科手術の後に、脂肪滴が血流中に循環して主要な臓器に到達することで引き起こされる全身性の臨床状態です。脂肪塞栓(FE)自体は骨折患者の約90%に認められる一般的な現象ですが、その多くは無症状であり、臨床的に意味のある症状を呈するFESとは区別されます。FESは重症化すると、深刻な呼吸不全、神経学的損傷、さらには死に至る可能性があります。
疫学とリスク要因FESの発症率は研究によって異なりますが、前方視的研究では11%から13%程度と報告されています。特に10歳から39歳の若年男性に多く、大腿骨骨折、多発骨折、高エネルギー外傷、閉鎖性骨折が主なリスク因子となります。また、受傷後の骨折固定の遅延や、手術中の髄内リーミング(穴開け)操作も発症リスクを高めます。
臨床症状FESの典型的な症状は、呼吸困難、神経障害、点状出血の3つです。
病態生理FESのメカニズムには「機械的理論」と「生化学的理論」の2つがあります。機械的理論では、損傷した骨髄の脂肪滴が静脈に入り込み、肺血管を閉塞させ、さらに卵円孔開存などを介して全身循環に回ることで臓器障害を引き起こすとされます。生化学的理論では、血中のリパーゼが脂肪を遊離脂肪酸に分解し、それが直接血管内皮を損傷して炎症反応や浮腫を誘発すると考えられています。
診断FESを決定づける単一の検査は存在しません。診断は主に臨床基準(Gurd基準、Lindeque基準、Schonfeld基準など)に基づいて行われます。画像診断では、脳の病変を特定するために磁気共鳴画像(MRI)の拡散強調画像(DWI)が最も敏感であり、小さな高信号スポットが散在する「スターフィールド・パターン」が特徴的です。
管理と予防FESに対する根治的な治療法はなく、予防と支持療法が中心となります。
予後平均死亡率は約10%とされています。呼吸不全は通常3〜7日以内に解決し、神経学的な欠損も多くの場合において良好な回復を示します。