
1.論文のタイトル:Comparison of the lethal triad and the lethal diamond in severe trauma patients: a multicenter cohort2.Citation:World Journal of Emergency Surgery. 2025; 20: 2.
論文内容の要約
背景と目的重症外傷患者の管理において、酸血症、凝固障害、低体温からなる「死の三徴(lethal triad)」の予防は、失血死を防ぐための重要な指針とされてきました。近年、これに「低カルシウム血症」を加えた「死のダイヤモンド(lethal diamond)」という概念が提唱されていますが、その有効性に関する証拠は不十分でした。本研究は、輸血を必要とする重症外傷患者において、死の三徴と死のダイヤモンドのどちらが24時間死亡率とより強く関連しているかを比較することを目的としました。
研究方法フランスの多施設データベース(TraumaBase®)から、2011年から2023年の間に登録された2141名の重症外傷患者を対象に、レトロスペクティブ(遡及的)な解析を行いました。対象は、入院後6時間以内に1単位以上の赤血球輸血を受けた成人患者です。低カルシウム血症は、イオン化カルシウム(iCa)濃度が1.1 mmol/L未満であることと定義されました。
結果解析対象となった患者の24時間死亡率は16.1%でした。統計的な解析(ROC曲線分析)の結果、24時間死亡率との関連性において、死のダイヤモンド(AUC 0.71)と死の三徴(AUC 0.72)の間に有意な差は認められませんでした。また、多変量解析において、酸血症、凝固障害、低体温の各要素は死亡率と独立して関連していましたが、低カルシウム血症については、他の要素で調整した後は死亡率との独立した関連性は認められませんでした。今回の対象患者の64%が低カルシウム血症を呈しており、その発生頻度は非常に高いことが確認されました。
結論重症外傷患者における24時間以内の早期死亡を予測する上で、従来の死の三徴に低カルシウム血症を加えて「死のダイヤモンド」としても、予測精度に有意な向上は見られませんでした。低カルシウム血症は蘇生過程で監視および対処すべき重要な因子の一つではありますが、従来の三つの要素(酸血症、凝固障害、低体温)と同列の独立した予後予測因子として扱うには、さらなる検証が必要であると考えられます。外傷後の病態は複雑であり、これら特定の指標のみに依存せず、包括的な管理を継続することが重要です。