1.論文のタイトルElectrical impedance tomography monitoring in adult ICU patients: state-of-the-art, recommendations for standardized acquisition, processing, and clinical use, and future directions
2.CitationCritical Care (2024) 28:377
論文内容の要約
電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)は、肺の換気と血流(灌流)の地域的な分布をリアルタイムかつ連続的にモニタリングできる非侵襲的なベッドサイド技術です。本論文は、成人の集中治療室(ICU)患者におけるEITの適切な利用を促進するため、データの取得、処理、臨床応用、および将来の展望について、国際的な専門家会議による推奨事項をまとめたものです。
主な内容は以下の通りです。
- データ取得の標準化: 正確な測定には電極ベルトの適切な配置が不可欠であり、通常は第4〜5肋間に水平に装着することが推奨されます。ベルトのサイズ選択や皮膚との接触状態の確認、他の生理学的信号(呼吸波形や心電図など)との同期記録が、データの信頼性を高めるために重要です。
- 信号処理と解析: EIT信号から換気や血流の成分を抽出するためのフィルタリング技術や、肺領域を特定するセグメンテーション、さらには肺の腹側と背側を比較するための関心領域(ROI)の設定方法について解説されています。
- 臨床応用(強制換気): EITは、最適な呼気終末陽圧(PEEP)の設定において極めて有用です。肺の過進展と虚脱のバランスを評価する手法(OD-CL法)を用いることで、個々の患者に合わせた肺保護戦略が可能になります。また、体位変換(腹臥位療法)の効果予測や、気管挿管位置の確認などにも活用されます。
- 臨床応用(自発呼吸): 自発呼吸下では、一回換気量や呼吸数のモニタリングに加え、肺の領域間でガスが移動する**「ペンデルルフト現象」**のリアルタイム検出が可能です。これにより、患者と人工呼吸器の不調和や、自発呼吸による肺損傷(P-SILI)のリスク評価に役立ちます。
- 換気・血流(V/Q)マッチング: 高張食塩水のボーラス投与を用いた手法により、ベッドサイドで地域的な換気血流比を評価できる点はEITの大きな特徴です。これにより、ガス交換異常の原因解明や治療介入の効果判定が容易になります。
- 将来の展望: 今後は、非換気領域(サイレント・スペース)のより詳細な評価や、3次元的な解像度を持つ3D-EITの開発、さらには画像再構成やアーチファクト除去における**機械学習(AI)**の活用が期待されています。
本ガイドラインは、技術的な障壁や標準化の欠如を解消し、EITを臨床現場における個別化医療の不可欠なツールとして定着させることを目指しています。