1.論文のタイトルFollow-up strategies for patients with splenic trauma managed non-operatively: the 2022 World Society of Emergency Surgery consensus document
2.CitationWorld Journal of Emergency Surgery (2022) 17:52
論文内容の要約
本論文は、腹部鈍的外傷で最も損傷頻度が高い臓器である脾臓の損傷に対し、**非手術的管理(NOM)**を選択した患者のフォローアップ戦略に関する世界緊急外科学会(WSES)のコンセンサス文書です。世界5大陸から集まった48名の国際的専門家が、デルファイ法を用いて11の臨床的問いと28の推奨事項を作成しました。
管理上の主要な指標は以下の通りです。
- 安静期間: 低グレードの脾損傷(WSESクラスI)では24時間以内の早期離床が安全であり、高グレード(WSESクラスII-III)であっても、臨床的に安定しヘモグロビン値が一定の範囲内で推移していれば、受傷から2日後の離床が可能であるとされています。
- 血栓予防: 静脈血栓塞栓症(VTE)の予防は重要であり、低グレード損傷では入院後24時間以内、高グレードでは48〜72時間以内に低分子ヘパリンなどの投与を開始することが推奨されます。
- 入院期間: 低グレード損傷では1日、高グレード損傷では3日程度の入院を目安とし、その後の臨床経過や血行動態の安定性に基づいて判断します。
- 脾動脈塞栓術(SAE): 血行動態が安定していても、CT検査で造影剤の血管外漏出が認められる場合や高グレード損傷の場合、外科手術を回避するための第一選択の介入として推奨されます。
- 画像診断のフォローアップ: 低グレード損傷でのルーチンな再検査は不要ですが、グレードIII以上の症例では血管合併症を除外するために、入院後48〜72時間以内に造影CTまたは造影超音波(CEUS)による再評価を行うべきです。
- 予防接種: SAEを受けた患者を含め、脾臓機能が維持されているNOM症例へのルーチンなワクチン接種は不要ですが、脾臓の50%以上を失った場合やグレードVの損傷では、無脾症に準じた接種を検討します。
- 身体活動の制限: 成人の場合、低グレードで3〜5週間、高グレードで2〜4ヶ月の激しい活動制限を提案しており、スポーツ復帰前には画像診断による治癒確認が推奨されます。
この文書は、根拠に基づく標準的な管理指針を提供し、入院期間の短縮や合併症の回避を目的としています。