
Today's List■ Sancan: Sonatine pour flute et piano -- サンカン: フルートとピアノのためのソナチネ
お話した通り、この曲は1,2楽章間と2,3楽章間(そもそもこれらを「楽章」と呼ぶのかは定かでありませんが)が、それぞれピアノとフルートのカデンツによって繋がっています。カデンツというと元を辿れば協奏曲で使われていたもので、演奏者の即興的な要素が色濃く、それがテーマに収束されていく様子が鮮やかなものです。そんな技法がこの小さなソナチネという曲の中でも使われています。
即興-テーマは大きな揺り戻しのようなものですが、フランス音楽において「揺れ」は重要な表現のうちの一つです。ドビュッシーが大々的に用いた、連続するテクスチャーの交代とでも言えるような手法は、揺れないテンポの中で揺れを再現できる発明だったと言えるでしょう。フランスの作曲家たちはその遺伝子を脈々と引き継いでいます。サンカンも例外ではありません。たくさんの小さな揺れが、この曲には詰め込まれています。
それら全てが即興とテーマという揺れに包括されたことによって、形式美の中に身を置きながらも、風や水といった不確かな感触を感じられる一曲となっています。